研究課題/領域番号 |
15360036
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高井 義造 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30236179)
|
研究分担者 |
永富 隆清 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (90314369)
木村 吉秀 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (70221215)
|
キーワード | 透過型高分解能電子顕微鏡 / 超解像位相差電子顕微鏡 / 生体試料観察 / ミニマムドーズシステム / DNA分子直視観察 / 3次元フーリエ・フィルタリング法 / 球面収差補正 / 位相像観察 |
研究概要 |
我々が提案する3次元フーリエ・フィルタリング法は、日本のオリジナルの位相再構成技術であり、あらゆる収差を補正し、生物組織の観察にとって特に重要となる1-2nmの比較的大きい構造を高コントラストで、しかも高S/N比で観察することを可能とする。本研究の目的は、3次元フーリエ・フィルタリング法を生物観察のための顕微鏡法として最適化し、分子レベルでの生体分子構造観察を実現することにある。 平成15年度は、 (1)数ナノから数十ナノも孔径を持つ多孔質の金薄膜支持膜を安定的に作製する方法を確立した。この支持膜は、電気伝導性だけでなく熱伝導性、機械的安定性にも優れており、DNAの様な生物試料を支持するには最適であると思われる。 (2)生体試料は電子照射に極めて弱いために、通常の無機試料の観察の1/1000程度の電子照射しか許されない。そこで電子照射を極力抑えた条件下で、現行の電子顕微鏡と撮像系ならびに処理システムを用いて3次元フーリエ・フィルタリング処理する場合の最適条件を系統的な実験から決定した。その結果、現行のシステムを利用しても最適条件下では、生体分子観察に対する分解能を0.3nmでキープしたままで約1/100の低ドーズ化が実施できることを明らかにした。 (3)生体分子の照射損傷を定量的に検討した。この種の研究はこれまでにほとんど行われていない。照損傷の加速電圧依存性、観察像のS/N比の加速電庄依存性、照射損傷の電流密度依存性および照射領域依存性を調べた。その結果、生体観察には低加速電圧化が好ましいこと、低い電流密度で長時間観察する方が生体分子を傷つけないことが定量的に示された。(今春の国際会議での発表を予定) (4)今回求めた条件でDNA分子鎖の分子レベル観察を実施した。損傷の程度は大きいが、これまでにない鮮明さで2重螺旋構造と塩基対配列が観察できた。(論文執筆中) (5)75kVの低加速電圧で最適に機能する生態観察用特殊ポールピースを試作開発した。現在性能を検証中であり、今後の実験によりその成果が発揮できると思われる。 次年度は、新しい生体試料作製、試料保持技術の開発、ヘリウム冷却ホルダーによる極低温での低損傷実験、低加速電圧での収差補正技術の確立と生体分子の分子レベル顕微鏡法を確立する。
|