今年度は、粉体材料より実用化により近いと考えられる薄膜材料の生成機構、特にその特異なナノ構造の解析において、研究の進展があった。 (1)レーザ支援プラズマCVD法による薄膜材料の形成初期過程の高分解能SEMによる観察に成功した。数100nm程度の初期核が、シリコン(100)基板上でmaze状に規則的な配列をしていることが観察された。基板結晶表面の影響は考えられるが、初期核生成がランダムでないことから、光パルス励起プロセスにおける自己組織的秩序形成が働いていると考えられる。この点を今後、明確化したい。 (2)薄膜及び粉体試料において、発光寿命の測定に成功した。5.5eVにおける発光寿命が500ピコセカンド以下であることが分かり、本材料が直接遷移型ワイドバンドギャップ半導体であることが強く示唆された。これにより、本材料を用いた紫外発光ダイオードや紫外半導体レーザーの実現の可能性が高まった。 (3)レーザ光の干渉を利用した手法により、この核生成パターンの制御に成功した。レーザ支援プラズマCVD法による薄膜試料の成長速度の温度依存性を調べた。レーザ光照射のないプラズマCVDのみの場合には、通常の正の活性化エネルギーを持つアレニウスプロットに乗り、基本的に表面プロセスが熱活性化によるものであることが分かった。一方、レーザ支援プラズマCVD法の場合には、活性化エネルギーが負になり、本質的に熱励起ではなく、光励起プロセスであることが示唆された。又、300℃の低い基板温度では、レーザー光照射の併用により、プラズマCVDのみの場合の60倍の成長速度を観測した。
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