Sp^3-結合性5H-BNのナノ・ミクロ粒子及び薄膜試料のプラズマ・レーザー・シナジーデポジション・プロセスによる合成手法を確立することが出来た。粒子試料は透過型電子顕微鏡観察による格子像によって欠陥を含まず、電子線回折により菊池線を示し、結晶性が極めて高い。一方、薄膜試料の場合、ナノ又はミクロ・コーン・モルフォロジーを持ち、その成長の時間発展をその場フォトルミネセンス法(新開発)等の手法により観察し、さらに、断面TEMによりそのナノ構造を観察した結果、結晶性は粒子試料に劣るが極めて特異な結晶分布(ペンシル構造)を示し、またそれに対応してコーン表面先端(10〜100ナノメータ領域)に局在化した伝導性を示す(これはAFMによる伝導性マッピングの新手法を用いた)。粒子試料はその結晶完全性により、225nmのバンド端による室温発光を示すが、薄膜試料は300nm付近のブロードな室温発光バンドを示した。またこれらは発光寿命から直接遷移型である可能性が極めて強い。Sp3-結合性粒子のプラズマ・レーザ・シナジーデポジションによる成長機構に関しては、実験結果が超臨界流体前駆体のプラズマ誘起相変態を示唆し、これを二次元非線形力学系モデルとして定式化、現象を説明した。又、薄膜試料の場合、プラズマから前駆体ラジカルを供給された光化学励起CVDとしての成長機構モデルが提案され、定量的な実験結果の説明に成功した。さらに、ナノまたはミクロコーンのフラクタル分布現象がSi(100)基板において見出され、この観察された温度依存性・自己相似性の起源をともに説明する数理モデルの作製に成功した。以上、成長機構に関しては著しい研究の進展があった。一方、ドーピング実験の確立が必要なデバイス化研究は、資金的な制約もあり、思うように進展しなかったため、今後の研究課題として残された。
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