研究分担者 |
塩浦 昭義 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助教授 (10296882)
岩田 覚 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 助教授 (00263161)
田村 明久 京都大学, 数理解析研究所, 助教授 (50217189)
松浦 史郎 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 助手 (00332619)
|
研究概要 |
離散凸関数に関連する重要な最適化問題である,M凸劣モジュラ流問題に対する高速アルゴリズムの研究を進め,二種類のアルゴリズムの提案を行った.研究代表者の数年前の研究結果により,この問題が擬多項式時間で解けることがわかっている.擬多項式時間の高速化のための一般的な技法としてスケーリング技法が良く知られているが,M凸劣モジュラ流問題に対してはその問題の構造上,スケーリング技法を適用することは難しいとされていた.本研究で提案した一つ目のアルゴリズムでは,M凸関数をLegendre変換して得られるL凸関数に注目し,L凸関数を通常の仕方でスケーリングした後でLegendre変換して戻したものをM凸関数のスケーリングと見なす「共役スケーリング法」という新たな技法を提案した.これにより,M凸劣モジュラ流問題に対する最初の多項式時間算法を実現した.一方,二つ目のアルゴリズムでは,特殊ケースである劣モジュラ流問題に対して提案された容量スケーリング法を拡張するとともに,アルゴリズム中で利用するポテンシャルの値を適切なやり方で更新することにより,多項式時間算法を実現した.一つ目のアルゴリズムに比べて,このアルゴリズムは概念的にわかりやすく,また実用上もより高速であることが期待できる. さらに,数理経済学における離散凸性の研究を行った.不可分な財を含む経済均衡モデルにおいて,消費者の効用関数にM凹性を仮定することの意味を議論し,経済学の文献で扱われている粗代替性,単改良性や非補完性と,M凹性との関係を明らかにした.この結果について,数理経済学者である金子守氏(筑波大学社会工学系),梶井厚志氏(京都大学社会経済研究所),楊再福氏(横浜国大経済学部),和光純氏(学習院大経済学部)らと討論を行ない,M凸性(M凹性)が経済学的に重要な概念であることを理解した.
|