研究概要 |
本研究課題の目的は,経済学,システム工学,オペレーションズ・リサーチ,最適化理論,アルゴリズム理論などの広汎な分野における基礎的諸問題に関わる離散構造を,離散凸性という横断的視点から整理し,「離散凸」という新しいパラダイムを確立することにある.本研究課題では下記に挙げた研究成果を得ることが出来た.いずれの研究成果も査読つき国際会議や学術雑誌に採択されている. (1)離散双対性に関わる最適化問題,とくに,M凸関数を目的関数に含む劣モジュラ流問題に対して,容量スケーリング手法に基づくアルゴリズムを提案した.一般のM凸劣モジュラ流問題に対して,このアルゴリズムはこれまでで最良の時間計算量をもつ. (2)離散凸解析の枠組みとは独立に研究されてきたマルチモジュラー性という概念が,実質的にL凸性と等価な概念であることを示した.この結果をふまえ,整数格子点上で定義されたマルチモジュラー関数に対する離散分離定理などの諸性質を導いた. (3)2次のM凸関数と木距離の間の密接な関係を示した.より具体的には,2次のM凸関数のヘッセ行列は実質的に木距離行列(にマイナスを掛けたもの)であることを証明した. (4)整凸集合上の離散不動点定理を与えた.これは,数理経済学における一般均衡理論ならびに非協力ゲームへの応用をもつ. (5)M凸関数の概念が,数理経済学で良く知られた粗代替性や単改良性と等価であることを明らかにした. (6)離散凸解析の数理経済学への応用として,複数の不可分財と貨幣からなる市場において競争均衡が存在するための条件を与えるなどの理論構築を行うとともに,競争均衡を求めるアルゴリズムをM凸劣モジュラ流問題の枠組みを利用して開発した.
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