| 研究概要 |
板材の成形においては,板厚が薄くなると成形限界が極端に悪くなることが知られている.これは板厚方向に存在する結晶粒の数が少なくなることで,バルクとしての性質がなくなるためであると考えられている.本研究課題では,板厚が極端に薄い材料である箔材料を対象として,変形挙動の板厚依存性を検証するとともに,変形機構に関するスケール階層構造を解明することを目的とする.
前年度では箔材料の試験方法の確立およびひずみ計測システムの開発を中心とした研究を行ってきたが,当該年度では数十ミクロンから数ミクロンまでのアルミニウム箔を対象として,力学的特性に及ぼす板厚の効果を実験的に検討した.得られた成果は以下の通りである.
(1)適正な試験片形状の選定・・・通常の短冊形試験片では試験片中央部で破断せずに正確な変形の計測が不可能であることがわかったので,中央部にわずかなくびれを有する試料を作成して実験に供した.その結果,箔中央部で破断するとともに再現性のある実験データを得られることがあきらかとなった.
(2)局所変形の観察・・・破断部近傍を顕微鏡で観察したところ,板厚が薄くなると変形の局所化が促進し,破断部近傍での変形が著しいことがあきらかとなった.したがって,箔材料の引張試験では一様に変形する領域を確保することが重要であることが示唆された.
(3)板厚の結晶粒への依存性・・・箔の板厚を20ミクロン以下としたところ,板厚内に存在する結晶粒の数が1個または2個となり,その際に破談ひずみ(成形限界)が著しく低下することがわかった.一方,それより板厚が大きいときには成形限界の低下はわずかであった.
(4)高温試験への適用・・・高温での粒界すべりを含む成形限界把握のために,試験後にイメージ炉をとりつけた.炉中でのひずみ測定のために,長焦点距離のセンサーを用いたひずみ測定法を検討した.
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