研究概要 |
本研究は,大きく【1】塑性構成モデルの構築と【2】構成モデルを用いた板成形シミュレーションとそれによる成形性の評価などに関する事項に分けられる.以下はそれぞれに関する成果概要である. 【1】塑性構成モデルの構築について (1)板の異方性,バウシンガー効果および繰返し加工硬化を適切に表現できる塑性構成モデル(Yoshida-Uemori model)を構築した.このモデルの妥当性を主に高張力鋼板および軟鋼板の二軸引張り試験および繰返し塑性実験により確かめることができた. (2)焼鈍した鋼にみられる降伏点現象を的確に表現できる弾粘塑性構成モデルを提案した.その妥当性を引張り試験および繰返し塑性試験により確認した. (3)アルミニウム合金(A5083)およびマグネシウム合金(AZ31)の引張りにおける応力-ひずみ関係の温度・速度依存性について実験的に明らかにするとともに,それを表現する粘塑性モデルについて提案した.また,これらの板材について温間二軸引張り試験を実施し,その異方性降伏曲面について調査した. 【2】構成モデルを用いた板成形シミュレーションとそれによる成形性の評価など (1)上記のYoshida-Uemori modelを汎用FEMコード(PAM STAMP 2G)に組込み,高張力鋼板のハット曲げ,Sレール成形などのシミュレーションを行った.その結果,板材の流動およびスプリングバックの解析精度は従来のモデル(等方硬化モデル)と比べて格段に向上した. (2)スプリングバックについては金型のたわみも影響することがわかり,それを考慮した計算アルゴリズムを新たに提案した. (3)スプリングバックを最適ビード配置により抑制する方法を提案した. (4)引張り曲げにおける破断限界のクライテリオンを提案し,その妥当性を実験により示した. (5)接着接合した板の成形性に及ぼす速度の影響を実験とシミュレーションより明らかにした. (6)局部加熱インクリメンタルフォーミングを考案し,アルミニウム合金板についてその成形限界を明らかにした.
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