研究概要 |
われわれは,切削加工の自動化に関するジオメトリ処理が,多面体のレンダリング処理と共通する性質を持つことに着目し,グラフィックス・ボード上のGPUの機能を用いて,これらの計算を桁違いに高速化する技術について研究を進めてきた.このGPUによる高速化手法は,切削加工以外のジオメトリ処理の高速化にも有効である.本研究では,製造支援のための様々な問題解決アルゴリズムをポリゴンの描画問題に置き換え,GPUの機能を用いて解を高速に導出する技術について研究をおこなった.GPUは今も進化を続けており,高度な計算機能が次々に組み込まれ,ムーアの法則を超えるスピードで性能向上が進んでいる.したがってこの技術を用いたソフトウェアは,グラフィックス・ボードを交換するだけで,容易に数倍の高速化を実現できる.またこの手法では,画像を描くことで解を得るので,数値誤差による処理の破綻が生じにくい.この技術の利用法について豊富な経験を有する国内の研究者4名が集まり研究を進めた結果,GPUを用いた製造支援のための幾何処理技術に関して,幾つかの有用な基盤技術を実現し,さらにこの分野の研究の今後とるべき方針を明らかにした.具体的には,以下の成果をあげることができた.(1)本技術に基づくCAMシステムの実用化に成功し企業でその有効性の評価を行った.(2)金型製造の工程設計自動化に必要な技術の検討を行い,その基盤となる加工領域の抽出技術を実現した.(3)自由曲面の生成やその品質評価を,GPUの機能を用いて行う技術を開発した.(4)製造支援の分野以外でも,複雑な幾何処理をGPUの機能を用いて実現するアルゴリズムを開発し,その性能評価を行った.いずれの分野でも,従来数時間かかっていた処理を数分にまで短縮する超高速なソフトウェアを開発することができた.
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