家電品や自動車のような基本的には大量生産される消費財であっても、急激な技術進歩や市場動向の変化のために、長期間に渡って安定に生産されることは少なくなってきた。しばしば、新製品が登場すると爆発的に売れて、その後急激に販売量が減少する。このような市場動向により、大きな生産量変動が起き、大量の新製品が売れ残り、耐用年数よりはるかに短い期間で生産システムの改変・廃棄が起こる。このことが、生産における大きな無駄を発生させ、生産の持続可能性を損ない、競争力を低下させることになる。 上記のような要因による生産量変動下では、生産システムだけでは問題を解決することは難しい。変化する製品と対応する生産システムを併せ考えて、長期間に渡って適切なライフサイクル設計を行う必要がある。製品やその生産量が変動しても、生産設備を無駄に廃却することなく、高効率の製造を実現できる生産システムのライフサイクル設計法を確立する。 本年度は以下について具体的に研究を進めた。 (1)製品ファミリと生産システムの対応関係の分析 技術進歩や市場要求による製品変化は、時に大きな生産工程の変化を引き起こす。そのために、生産工程を基本的な原子工程まで還元し、抽象的な仮想製造機械・システムに対応させ、それを実設備制約に基づく実システムへ割り当てることにより、製品ファミリ化手法を研究した。 (2)既存設備再利用性を向上させる生産システムのライフサイクル設計 従来の汎用工作機械や専用設備の構成にとらわれることなく、原子工程に対応する抽象的な生産設備要素を考え、製品ファミリの構造化に合わせて生産設備要素を組み合わせることで、製品変化と良く対応する構造を持つ生産システムを設計する手法を研究した。
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