研究概要 |
本研究は,多軸制御工作機械の代表的な機械である5軸制御マシニングセンタ及び複合加工機に固有の旋回軸系に関係する幾何学的な偏差の同定方法とその同定方法に基づいて機械及びNCプログラムを補正する方法を開発することを目的として実施した。現在まで多軸制御工作機械の高精度な偏差測定方法はなかった。わずかにISO10791に主軸頭旋回形5軸御マシニングセンタの検査方法が規定されているが,この方法は,直定規とダイヤルインジケータを使ったもので測定に誤差が入りやすく,問題が多かった。 16年度は,昨年度開発した方法をさらに発展させ,同時3軸制御させたときのボールバーで測定された偏差の軌跡から求められる偏差だけを利用する方法を提案した。この方法の特長は,得られた偏心量と5軸制御マシニングセンタに固有の偏差との関係が数式で表現できることである。そのため,ボールバーで測定した軌跡から求められる偏心量の値を使って,幾何偏差を同定できる。この方法を実機に適用し,同定した偏差を補正したところ高精度な軌跡を得ることができることが確認できた。 また,同時4軸制御運動を利用して偏差を同定する方法については実験を行い,その結果に含まれる誤差について検討した。この方法は,同時3軸制御では4通りの測定が必要であったのに対して2通りの測定を行い,その偏差の軌跡から一度にすべての偏差を同定できる点で優れているが,精度に問題のあることがわかった。 以上の方法をターニングセンタにも適用したが,ボールバーを使った測定ではボールバーの長さに課題があることがわかった。
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