研究概要 |
近年のめざましい材料開発と生産技術の進歩により,大量生産しやすいプラスチックレンズはさまざまな場面において使われるようになってきた.さらには,CDやコピー機の読み取り装置,マイクロカメラの対物レンズなどで使われている微小レンズも作られるようになってきた.プラスチックレンズの製造過程は大きく,成形,研磨,コーティングに分けられる.多くの場合,射出成形によりプラスチックレンズは成形される.射出成形に用いられる金型は製作,加工に長い時間を要し,加熱溶融,射出,冷却というサイクルを経る必要があり,成形のためのサイクルタイムの短縮も課題となっている. 液体は他の相との界面においてその界面張力により球面をつくるが,その曲率は界面張力の大きさによって変化する.したがってプラスチックに対しても,液体を型とすれば任意の曲率をもった球面を成形できる可能性がある.また型となる液体を光透過性の高い物質とし,感光性樹脂を被成形物とすれば,従来の光造形法とは異なって層状構造を取らない球面体の成形が可能となる. 本研究では,液-液界面の性質を利用した液体を型と見なすプラスチックの光成形法によりレンズを成形する. 本年は,曲率を変化させる要因である界面張力を,界面活性剤の濃度を変えることにより形状を制御し,光の照射方向を変えることで成形過程を明らかにしながら,本手法によるレンズ成形の可能性について検討した. まず,照射の方法を変えて感光性樹脂の硬化過程を観察し,レンズ形状を得るにふさわしい照射方法の選定を行なった.その結果得られた球面体の光学レンズとしての基本性質を測定した.
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