研究概要 |
本研究では、従来の電気粘性流体をゲル構造に置き換えることを考え,これを微小位置決め機構のクランプ機構に適用することを目的としている.平成16年度においては,ゲル構造電気粘性流体(ERゲル)を用いたクランプ機構の試作を行い,これをテーブルシステムに適用して,その性能評価を行った.その結果,試作したクランプ機構は実用上十分なクランプ力を発生できることが明らかとなった.しかしながら,ERゲルを一対の電極で挟みこんで使用する両側電極構造は,テーブル移動体側への高圧電源の接続が必要となり,実用上とりあつかいにくいことも明らかとなった.そこで平成17年度においては、片側に陽極と陰極を交互に配置する片側電極構造を考案し,これを用いたクランプ機構の試作とその性能評価を行った.具体的な研究実施内容は以下のとおりである.(1)片側構造電極の製作方法の検討:本研究では,非導電性の基盤に銅膜を接着した電気回路用の基盤に注目し,これにエッチング加工を施すことにより任意の片側電極構造を容易に製作可能とした.(2)ERゲルの基本特性の評価:片側電極構造における,電極パターンとこれに装着するERゲルの膜厚がER効果に与える影響について実験的に解析し,最適な電極パターンとERゲル膜の寸法について明らかにした.(3)片側電極構造によるクランパ機構の試作とその性能評価:(2)の結果にもとづいて最適な片側電極構造とこれを装着したクランプ機構を試作し,その性能を評価した.評価項目としては,電場強度と静的クランプ力の関係,クランプ力のオンオフ時における過渡的応答特性,電場強度の動的変化に対するクランプ力の動的応答性などを挙げ,それぞれについて測定を行った. 以上の研究成果により,本研究で開発したERゲルを用いたクランプ機構の有効性が明らかとなり,ナノ位置決め機構に対するゼロフォースクランプシステムへの適用可能性が示された.
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