研究概要 |
本研究の目的は,従来の加圧成形型RBセラミックスの製造法では実現不可能である寸法収縮率が小さく,複雑形状や量産品の製造に適した新しいRBセラミックスの製造方法を開発し,摺動部材への応用を図ることである. 平成15年度では,RBセラミックス粉体とフェノール樹脂を混練したペレットを用いて,射出成形機により所定の形状に成形した後,この成形体を900℃,窒素ガス雰囲気炉中にて炭化焼成することにより射出成形型RBセラミックスを開発した.また,相手材をAl_2O_3,SUJ2,SUS304として大気中無潤滑下において,ボールオンディスク型摩擦試験機を用いて,射出成形型RBセラミックスのトライボロジー特性を明らかにした. 得られた主な結果は以下のとおりである. 1.RBセラミックス粉体を最大で85wt%配合したペレットを用いて,射出成形が可能であることが確認された. 2.射出成形型RBセラミックスの炭化焼成前後の寸法収縮率は,従来の加圧成形型RBセラミックスが25%であるのに対して,2〜5%であり,大幅な改善が見られた. 3.水銀圧入法による細孔径分布測定の結果,射出成形型RBセラミックスは,直径80nmと直径5nmに細孔径のピークを有する多孔質構造を有する. 4.射出成形型RBセラミックスは,15GPaという低ヤング率を示す一方で,最大270MPaの圧縮強度を示し,従来の加圧成形型RBセラミックスのおよそ4.5倍の高強度を有する. 5.射出成形型RBセラミックスは,0.002m/s〜3m/sのすべり速度において相手材によらず,およそ0.2あるいはそれ以下の摩擦係数を示す.また,相手材によらず,すべり速度の増加に対して,ほぼ一定の摩擦係数を示すことから,スティック・スリップの抑制効果を有する. 6.射出成形型RBセラミックスは,相手材によらず,10^<-9>mm^2/N以下の比摩耗量を示し,優れた耐摩耗性を有する.
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