研究概要 |
1.スラリージェット式摩耗試験装置を用いて、PVD製膜時の基板温度を変化させたTiN単層膜に粒径1.2μmのアルミナ粒子を高速で衝突させ、皮膜の摩耗特性を研究して、以下の結果を得た。 (1)TiNの製膜時の基板温度が高くなるほど、超微小硬度計で測定した皮膜表面の塑性変形硬さが大きくなり、表面のSEM、AFM観察及びXRD解析から、TiNの結晶化がより明瞭になる。 (2)固体粒子の衝突による摩耗速度(摩耗率)は、製膜時の基板温度が高くなるほど減少する。これは、固体粒子衝突による摩耗速度が一般に硬さに反比例する結果とは反対であり、スラリージェットによる摩耗が皮膜の硬さよりもTiNの配向性や結晶形態に影響されるためと考えられる。 (3)(1)(2)の結果から、本研究で提案している固体粒子衝突法はTiNの製膜条件の違いによるTiNの皮膜特性に起因する表面強度の簡便な評価に有用である。 2.スラリージェットによる表面損傷を利用して脆性材料の微細加工を実現するための基礎的実験を、CNCブラスト装置を用いて行い、以下の結果を得た。 (1)粒径1.2μmのアルミナ粒子を含む水をCNCブラスト装置によってジェットにしてガラス材に照射すると微細加工が可能となることを確認し、加工のために制御すべき種々の因子の影響を明らかにした。 (2)ガラス材の実加工を行う方法を示し、平面形状,針形状,非球面形状の3つの形状をマイクロスケールで作製できることを実証した。 (3)ガラス加工面をSEMとAFM観察を行って、表面の加工がサブミクロンのクラックの発生によりナノスケールで生じることを明らかにした。
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