研究概要 |
3台のテストカー(ガソリン自動車)で、走行距離を明らかにして採取したエンジン廃油,ガソリンスタンドから回収した多種混合のエンジン廃油および2種類の切削加工油と2種類の普通潤滑油を用いて、いわゆるエンジン廃油(Used engine-oil)が歯車潤滑油や切削加工油等に有効利用できるかを、当初の研究計画に従い実験を行ない、以下のことが明らかになった。 (1)化学成分分析と粘度変化:走行によって化学成分の含有量はほとんど変化しない。粘度は少し低下する場合がある。また、エンジン油には塩素成分は一切含まれていない。 (2)四球式摩擦摩耗試験による評価:世界中で一般的によく多用されている試験ではあるが、実際には実験条件を絞るのが難しい試験方法である。荷重条件と主軸回転数等を色々と変化させることで、エンジン廃油の走行距離の影響や添加剤の影響を明らかにすることが出来た。 (3)二円筒転がり摩擦試験による評価:エンジン廃油のトライボロジー特性を実験的に調べた結果エンジン廃油とエンジン新油について転がりすべり摩擦係数と油膜形成状態などの潤滑特性にはほとんど違いは見られなかった。また,転がり滑り条件での面圧強度試験(約1000MPa)では、むしろエンジン廃油の方が、転がり接触疲労寿命を延ばす場合があることが分かった。 (4)歯車のホブ切り加工試験:エンジン廃油を加工油として使用し,ハイスホブの工具摩耗試験を行ったところ,クライムカットでは専用加工油を使用した時よりも約5倍も工具寿命を延ばすことが分かった。 (5)大型の歯車耐久試験による評価:エンジン廃油が歯車潤滑油として有効利用できるかを実験的に調べた。平歯車とはすば歯車の負荷試験(最大円周荷重29400N,接触圧力2300MPa)の結果、エンジン廃油がピッチングの進展に悪影響を及ぼすような明確な違いは見あたらなかった。
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