鎖状高分子の希薄溶液における乱流抵抗低減現象(トムズ効果)を明らかにするために、鎖状高分子の乱流中での挙動の直接可視化を目的とした実験的研究を行った。 直接可視化の方法として、微生物の観察に効果的とされる暗視野顕微鏡法を採用し、市販顕微鏡(オリンパス:BX51)に40倍対物レンズ(UplanFl40×、NA0.75、WD0.51mm)あるいは100倍対物レンズ(UplanApo100×Oil Iris3、NA0.50〜1.35、WD0.10mm)を装着し、油浸式暗視野コンデンサー(NA1.2〜1.4)を取り付けた。照明装置として、連続光照明装置(100Wハロゲンランプハウス)あるいはパルス光源(カトウ光研、Xe電源入力エネルギー=最大25J、最大繰返し発光周波数=5Hz)を用いた。撮影装置としてICCDカメラ(浜松ホトニクス:C7772-02)を用いた。 このような可視化装置を用いて、粒径800、400、150、60、20nmの標準ラテックス粒子の可視化撮影を行い、スライドガラスとカバーガラスに挟まれた液層中の粒子挙動を鮮明に可視化観察できることを確認した。 次に、鎖状高分子としてポリエチレンオキサイド(PEO、明成科学工業、アルコックスE-160)を質量濃度50〜500ppm溶解させた希薄高分子溶液を作製し、スライドガラスとカバーガラスに溶液を挟んでせん断力を付加した後に可視化観察を行った。その結果、長さ10μm程度の棒状の高分子を観察することができた。50ppmでは棒状の高分子は個々に独立して観察されるが、500ppmでは葉脈状の編目構造を形成することが明らかになった。 このような観察結果を踏まえて、水流中のPEO高分子挙動の観察に向けて準備を進めた。比較データの多い基礎乱流場であるチャネル乱流を実現するため、2枚のガラス壁で形成される幅1mmの矩形チャネル流路を製作し、静圧駆動によって流速10m/sの乱流状態を実現した。この速度で移動する高分子挙動を捉えるため、パルスレーザ装置を導入した。
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