研究概要 |
本研究は,高温・高圧環境における乱流燃焼機構の解明を低酸素乱流燃焼に拡張し,燃焼ガスを再循環した新しい高負荷燃焼方式としての応用展開を行うための指針を得ることを目的とする.具体的には,燃焼ガスを模擬し窒素および二酸化炭素により希釈された最低酸素空気を酸化剤として用い,乱流予混合火炎,乱流拡散火炎,さらに両者の中間的な部分予混合乱流拡散火炎を研究対象として,OHおよびCHラジカル分布計測による乱流火炎構造と反応帯構造の観測,乱流減衰過程の測定,乱流燃焼速度の測定等行う. 本年度は,最高温度1300Kまで予熱し窒素および二酸化炭素希釈により酸素濃度を4%まで低下させた乱流噴流拡散火炎のCHラジカル分布をPLIF法によって可視化する方法を確立した.高温酸化剤中では酸素濃度を低下させても拡散火炎の安定性が大幅に向上し,上流に乱れ発生版を設置した強い乱流場における拡散火炎の挙動を観測することができた.CH-PLIF分布は発熱域によく対応していることが知られているが,本年度のCH-PLIF可視化結果によると,高温・低酸素雰囲気の乱流拡散火炎は特にリフト火炎においては小さな燃料塊に分断され,その周りに薄い発熱帯をもつ泡状の火炎構造となることがはじめて明らかとなった.高温空気流に対してLDVによる乱流減衰過程の計測も行った.また,乱流予混合火炎に対しては,高温・高圧下において初期乱れが非常に弱く火炎の固有不安定性によって自己乱流火炎化する条件における火炎のOHラジカルに対するPLIF画像を撮影し,画像処理によって燃焼速度を求めた.これにより,乱れが非常に弱い領域における火炎の見かけの燃焼速度は特に高圧下では固有不安定性により大きく増大し,また火炎領域の増大は温度・圧力を考慮した物性値を用いて線形理論から推定される擾乱成長率によく一致することがわかった.さらに,本年度は,実験装置改良として高圧燃焼装置における二酸化炭素供給系をあらたに備すると共に,高圧下で拡散火炎を安定化させるバーナを製作した.
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