低温酸化反応機構解明からの圧縮着火制御へのアプローチ

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15360106
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 手崎 衆 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (50236965)
• キーワード: 低温酸化反応 / 圧縮着火 / 内燃機関 / DME / アルデヒド / 周波数変調分光 / 反応機構

研究概要

1.改良エンジンの構築
排気量400cm^3の単気筒エンジンを改造し、外部電気モーター駆動、圧力ピックアップの装着、吸気及びシリンダの予熱温度調節、および筒内直接サンプリングポートを装備した。筒内サンプリングについては,高速作動バルブにより筒内ガスを真空槽に取り出し、質量分析管にて組成を実時間計測することにより,従来法の時間応答を改善するものであるが、本年度は作動排気系の詳細設計を行いサンプリング装置の第一号試作品を作成、動作検証中である。並行して従前の手法である熱炎抑制条件での排気成分分析を、DME燃料へのメタノール添加の系に適用して行った。メタノールがDMEの圧縮着火を遅らせる効果は、低温領域の連鎖反応において、メタノールが連鎖担体のOHを消費し再生しないためで、生成するアルデヒドの同様の効果が重畳することで、連鎖停止条件が定まることを確認した。
2.ヘリオットセルの構築
ヘリオット(Herriott)型と呼ばれる多重反射長光路吸収分光セル、波長可変ダイオードレーザ光源、光周波数変調検出系を備えた素反応解析装置を構築した。当初予定通り、蛍光法では観測できなかったHO_2ラジカルの検出に成功し、10^<12>molecule/cm^3程度の高い検出感度を達成した。さらに、H_2O、H_2O_2、OHラジカルを単一のダイオードレーザ光源の波長走査範囲(1.40-1.44μm)でほぼ同様の感度で検出できることが明らかになった。これらはいずれも、吸光係数の小さな0-H振動の倍音吸収であるが、周波数変調の感度増強により観測可能となった。特にOHがこの波長帯で反応解析に足る感度と時間分解能で検出されたことは、我々の知る限り初めてである。本研究が目的とする低温酸化反応の解明にとっては、HO_2とOHの生成分岐比を知ることが大変重要であるため、この成功は意義が大きい。

研究成果

• [文献書誌] 山田裕之, 須崎光太郎, 手崎衆: "ジメチルエーテルを用いた予混合圧縮自着火(HCCI)機関における低温酸化過程の機構検討"日本機械学会論文集B編. 69・679. 743-750 (2003)
• [文献書誌] H.Yamada, H.Sakanashi, N.Choi, A.Tezaki: "Simplified Oxidation Mechanism of DME Applicable for Compression Ignition."SAE Paper. 2003-01-1819. 1-8 (2003)
• [文献書誌] 阪梨英樹, 稲田陽平, 崔南一, 手崎衆: "LIFによるDME-空気予混合圧縮自着火機関内HCHO濃度評価"日本機械学会論文集B編. 70・690. 503-510 (2004)
• [文献書誌] H.Yamada, N.Choi, A.Tezaki: "Measurements of Formaldehyde in Homogeneous Charge Compression of Dimethyl Ether."25^<th> Intern.Energy Agency Task Leaders Mtg.(IEA-TLM), Faringdon UK, subtask 3.4C (2003). 25. 1-7 (2003)
• [文献書誌] H.Yamada, H.Sakanashi, A.Tezaki: "Chain Termination Mechanism at Cool Flame Stage in Compression Ignition of DME and Straight Chain Alkanes."Proc.19^<th> International Colloq.Dynamics Explosions and Reactive Systems (ICDERS), Hakone, Japan, Paper No.161. (CD-ROM). 1-4 (2003)