従来の空調において効率低下の原因となっている除湿操作を、除湿剤を用いることによって高効率化するケミカル調湿において、各種の除湿剤を検討の上、熱力学的に炭酸ナトリウム1水塩の水和による同10水塩の生成反応を含むいくつかの水和反応が適していることを確認した。さらに、理論COPとして11.4という高い値が得られ、コスト、安全性などの観点からも適切と考えられる上記炭酸ナトリウム10水塩/1水塩の水和・脱水系を選択した。その上で、ケミカルヒートポンプなどの気固反応を利用する熱システムにおいて問題となっている充填層の低い伝熱特を向上するためにスラリー化技術を提案、コストと安全性を踏まえてサラダ油とブレーキオイルを混合した溶媒中に炭酸ナトリウム水和塩を懸濁させた水和塩スラリーを調整し、その吸湿特性について実験的検討を行った。流通式反応器を作成して検討を行った結果、この水和塩スラリーは確かに脱水特性を有することを確認した。さらに、吸湿後の粒子についてX線回折(XRD)で分析したところ、10水塩の生成を確認し、たしかに想定している反応が進行していることを確認した。また、その吸湿速度を測定するために、粒径をそろえた炭酸ナトリウム1水塩を所定の水分濃度を有する溶媒に懸濁、水分濃度の現象を経時的にカールフィッシャー水分計を用いて測定した。この結果、288Kにおける本スラリーの平衡含水率は0.8wt%程度であることを確認した。
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