研究概要 |
以下に、本研究で得られた主要な成果を列挙する。 1.異なる炭素繊維材を対象にした熱伝導率の測定を行い、熱処理温度などの違いが熱伝導率におよぼす影響を明らかにした。カーボンファイバー単繊維の熱伝導率は熱処理温度によって大きく変化し,3000℃で処理したものは700℃で処理したものに比べて数百倍高い熱伝導率を持つ. 2.カーボンナノファイバー分散体の熱伝導率は,嵩密度により変化する.熱伝導率と嵩密度の関係を定量的に明らかにするとともに,分散体の電気伝導度を高い精度で測定することに成功した. 3.ナノスケールの寸法をもつ試料の熱伝導率を測定するために,白金の加熱細線の直径や長さの最適値に関して理論的な検討を行うとともに,MEMS技術を用いて定プローブの微細化を達成した.その結果,幅100nm,厚さ40nm,長さ6μmの加熱細線部をもつプローブの製作に成功した.このプローブは直径数十nmのカーボンナノチューブの熱伝導率測定に適用できることが確かめられた. 4.産総研の協力を得て,マニピュレーション走査型電子顕微鏡下で電子線を照射することにより,上述のナノプローブに試料のカーボンナノチューブをT字型に接合することに成功した. 5.熱伝導率測定の前提となる,白金ナノプローブの熱伝導率および電気伝導率を高精度に測定した.ナノフィルムについてのこれらの値はバルク白金の値の半分程度となることを見出した. 6.クライオスタットを用い,100Kから320Kまでの温度範囲で,異なる直径を持つカーボンナノチューブ単繊維の熱伝導率測定を行った.温度300K付近でナノチューブの熱伝導率が2000W/mK程度の値を持つことが明らかになった. 7.カーボンナノファイバーやナノチューブ単繊維の熱伝導率測定における誤差の評価を行い,本測定法の適用範囲を明確にするとともに測定値に関する新しい知見を公表した.
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