研究概要 |
微小ピエゾ振動子を利用し,微細な細胞の環境ストレスを精密に検知し得る無侵襲プローブセンサーを開発した.またこれを用いた動物卵細胞の環境ストレス検出実験および評価システム構築のために,今年度は,以下の手順で研究を遂行した. 1.ピエゾマイクロプローブセンサーおよび計測システムの構築:ピエゾ素子を利用した微小振動子とこれに付随する触覚プローブから成るシンプルな構造を有するマイクロプローブセンサーを製作した.振動子先端のニードルプローブを被測定体に接触させた場合の振動子のインパルス応答を高精度に測定することにより,被測定体の固有振動数,弾性係数,粘性減衰係数などの動的力学特性を定量的に評価することができる.本研究ではこのセンサーの触覚プローブを中心に大幅に小型化,最適化し,マイクロメータオーダに至る細胞の動的力学特性の精密計測を構築した. 2.卵細胞を用いた環境ストレス検出実験および評価:第一段階として被験体は,環境悪化のため絶滅が懸念されているめだかの受精卵細胞を用いた.また,人工受精が頻繁に行われている牛の受精卵細胞を用いる準備も開始した.環境ホルモンとしての影響が懸念される代表的除草剤グルホシネートによるめだかの受精卵細胞に対する環境ストレスの精密な検出および評価を行った.さらに,これら環境ストレスによって誘発される細胞の形態異常,アポトーシスなどに関与する力学的制御因子の検証を行い,卵細胞病変診断法の基礎的データベースを構築した.とりわけ,環境ホルモンによるストレスは10ppm程度の低容量の場合でも,卵細胞に力学的な変化を誘起させることが明らかになった.
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