研究概要 |
昨年度までにベルト駆動式の摩擦振動試験器および回転円盤にスライダを押しつける方式による実験装置を設計試作し予備実験を行った.円盤及びスライダは構造用鋼で構成され,スライダは円板の回転中心にスライダ支持用のばねの一端を固定することにより円周方向に弾性支持されると同時に,半径方向の軸に関して回転自由度を有しており,その2方向に弾性をもつ構造とした.スライダは本来円周方向の摩擦力のみ受けて振動するというのが従来の物理的解釈であったが,半径方向を軸とする回転運動を行うことにより,スライダの面外振動が誘起され,結果として騒音発生につながるというのが申請者の主張である. 平成17年度に,昨年度試作した実験装置を用いて,摩擦振動のメカニズムに関する検討を行った.特に面内振動から面外振動が誘起されるメカニズムに関しては明らかでない点が多く,まず実験的に現象を確認した.センサは加速度計による測定を基本とし,また計測機器としてデータレコーダを購入した.実験の結果に基づいて,摩擦振動のメカニズムが全て明らかになった訳ではないが,振動振幅を抑える可能性を示した. 一方で,MR流体を用いた可変減衰エンジンマウントの設計・試作を行った.MR流体は外部から加えた磁場の強度に応答して流体としての降伏応力が変化する機能性流体として知られ,降伏応力の変化は摩擦減衰力の変化としてとりだすことができる.一様流体中に微小な磁性粒子を分散させた混相流体であるが,粒子の沈降が現時点では最も少なく,しかも日本で製造している戸田工業(株)から流体の提供を受けた.エンジンマウントはエンジンを支持する機械要素として知られているが,本研究では摩擦力を変化させることにより車両衝突時の安全性を高める可能性について検討した.その結果,エンジンの水平方向移動量を許容することで,運転者および乗員に加わる加速度の最大値を低減できることを示した.今後さらに振動低減に関しても検討を進めることとした.
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