研究概要 |
この研究は,製鉄機械などのロールに発生する多角形摩耗現象を解明し,その対策を明らかにするものである.得られた結果は以下のようにまとめられる. 1.実機ホットレベラで発生した多角形摩耗の相似性・階層性を詳細に検討するために,1自由度および2自由度系の実験装置を製作した.1自由度系の実験装置はパターンが形成しにくく,改良が必要となった.2自由度系の実験装置は規則的なパターンがロール外周上に形成され,データをとることができた. 2.2自由度系の実験装置では,並進運動および回転運動によるパターン形成が可能であり,実験の結果,両者の振動が混在して存在し,多角形摩耗も両者の振動によるものが混在することがわかった.当初,どちらかの振動モードが選択的に発生してくるものと考えていたが,その考えを修正する必要が生じた. 3.多角形摩耗の角形数は正多角形で,接触回転系の固有振動数/ロールの回転数から推測できること,角形数の測定は数ミクロンオーダーであること,パターンが成長してくると,ロール間の接触が常には保持できなくなって,パターンの成長が止まることなどが明らかになった. 4.多角形摩耗の遅延対策として,ロールの回転数をわずかに変更して,すでに形成された多角形摩耗を消しつつ,異なった角形数の多角形摩耗を生じさせる過程を利用する実験を行った.実験中の実験装置の固有振動数がロールの1回転中にも変化し,多角形摩耗の成長過程でもわずかに変化するため,期待しているような遅延対策の成果はまだ得られていない.今後,実験装置の固有振動数を一定に維持できる工夫を行いたい. 5.接触回転系の多角形摩耗の遅延対策に関して実機のデータを基に解析的に解明した. 6.ホットレベラを製作する場合,どのように設計すれば多角形摩耗を防止することができるかという初期解析(ワーストオーダアナリシス)を行い,新設計法を提示できた.
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