研究概要 |
製鉄機械ホットレベラのワークロールに発生する多角形摩耗現象を防止するための初期設計の指針およびロール回転数変更による遅延対策,および動吸振器によって完全に防止するための動吸振器の最適設計法を提案した.結果は以下のようにまとめられる. (1)モード解析を用いて多角形摩耗に関与する3つの要素,すなわち,摩耗のしやすさを表すパラメータα_l,構造剛性に関するパラメータβ_lおよび減衰に関するパラメータζ_lを導出し,それらの多角形摩耗への影響を調べた.ロールの多角形摩耗現象防止のための初期設計は,α_l,β_lを小さく,ζ_lを大きくすることである. (2)お互いに近い2つのロール回転数を交互に変化させて多角形摩耗現象を遅延させる方策を提案し,その効果を数値シミュレーションで明らかにした. (3)減衰のない1自由度系の摩耗によるパターン形成現象モデルに動吸振器を取り付けた系に対する特性方程式の根の近似解を導き,特性根の実部σと摩耗のしやすさを表すα,接触剛性の強さを表すβおよび系の周波数応答の実部Re{G(jq)}の間の関係を明らかにした.その結果,系を安定化するためには,Re{G(jq)}の最大値をできるだけ小さくすることが要求された.この要求に対して,1自由度強制振動系を制振するための動吸振器の最適設計法(最適同調,最適減衰)の概念を適用して系が完全に安定化するための動吸振器の設計条件を導いた. (4)モード解析を介して上記(1)の結果を2自由度ホットレベラ系のワークロールに発生する多角形摩耗現象の完全な防止策に適用し,ロールと厚板との間の接触剛性が比較的低い場合には,2つの動吸振器ですべての多角形摩耗を完全に防止できることを示した. (5)自励振動であるロールの多角形摩耗現象の防止のためには,動吸振器の最適同調は強制振動のときとは異なるが,最適減衰は強制振動のときと全く同じである.多角形摩耗防止のためには,強制振動の制振と同じ減衰を動吸振器に持たせなければならないことが判明した.
|