研究概要 |
物質の質量は大きさの3乗に比例するのに対し凝着力は大きさの1乗に比例するので,マイクロマニピュレーションにおいては固体間凝着力が無視できなくなる.マニピュレーション用のプローブに凝着した操作対象をそのプローブから離す為に,電圧を印加し静電力により凝着物質を脱離することは1つの有力な方策ではあるが,脱離後基板に着地させる事が難しい事が解っており,今まで定量的な評価と理論的な解析が成されていないために再現性および信頼性の点で問題がある.そこで,本研究では,微小体マニピュレーションにおいて,印加電圧の時間制御によってプローブからの物体離脱後,着地までの運動エネルギーを静電力によって制御し,再現性高く基盤に着地させる手法を確立するために理論・実験の両面から検討を行った.境界要素法計算に基づく広範囲にわたる理論的検討から,市販の電源を用いる限り非常に狭い範囲の条件でしか実験が出来ない事が判明した.プローブの先端形状を変更する事でその条件を若干広げることが出来ることを明らかにした.プローブの先端曲率を大きくする事で凝着力を下げることが出来,また,電圧印加によって発生する静電力はそれにより殆ど変化せず,低い電圧で離脱させる事が可能になり,また,離脱後の飛行中の静電力による加速も小さくする事ができる為である.また,付加的な成果として高電圧に起因する放電現象を抑制できる事も明らかになり,この観点からも可能条件範囲は広がったと言える.
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