研究概要 |
1.超小型ナノマニピュレータの開発 昨年度に試作した透過型電子顕微鏡(日立,H-800,200kV)(以下,TEM)内に収納可能な超小型ナノマニピュレータは,走査型電子顕微鏡(日本電子,JSM6500F)内部で受動ステージを塑性変形させて粗動調整を行う形式とした.剛性の評価を行い,異なる顕微鏡間で試料を移動する際に問題がないかどうかを評価した.この結果,受動ステージの固定部の強度が低いことが判明した.このため,固定部の材質を銅とし,塑性変形部は鉛またはインジウムとして機械的特性を改善した. 2.ナノラボラトリにおける加工・成膜 単一カーボンナノチューブプローブの表面に二酸化ルテニウム(RuO_2)を担持して,その電界放出特性を詳細に調べた.また,二酸化ルテニウムで表面を修飾した単一カーボンナノチューブプローブでは修飾しない場合と比べて,電界放出電圧を約20%低減できることがわかった.また,電界電子放出を利用した電子ビーム誘起蒸着(EBID)による成膜・パターンニング特性を調べた.EBIDにより,W(CO)_6を利用した導電性薄膜を成膜し,エネルギー分散型X線分析装置を用いて成分分析した結果,タングステンの質量が堆積物の98%にも達し,高純度金属の堆積を実現した. 3.ナノラボラトリにおける操作・組立 1.で開発した新型受動ステージを有する超小型ナノマニピュレータをTEMに組み込んで,各種ナノ材料をTEM内で観察しながら操作するシステムを構築した. 4.ナノラボラトリにおける計測・評価 多層のCNTを破壊し,内層と外層を分離し,破壊された部位をTEM内で観察した.また,外部電界を加えて内層と外層をスライド変位させ,静止画を記録したところ,電圧に応じて内層が移動することが確認できた.これによりCNTがナノアクチュエータに応用できることを示した.
|