研究概要 |
本研究課題において,今年度は以下の項目を中心に行った. (1)人体脊椎系の詳細な加振実験 座位の人体の加振実験を行い,脊椎を含めた人体上体系の振動伝達率を測定した.本実験は座位の人体に対して座面に垂直方向に振動を与え,各椎骨上の振動応答を測定した.応答は,頭部,頚椎,胸椎,腰椎,仙骨上の全13点の2方向,全26自由度の計測を行い,伝達率から,モード特性を求めた.その結果,各共振周波数における人体上の詳細な振動応答を測定することができた.また,センサを皮膚に固定する際に,局所的な振動系が作られ,応答が歪められてしまう事があるが,これに対して簡便な補正方法を検討した. (2)解析モデルの構築 人体の椎骨を剛体,椎間板を回転バネ,回転ダッシュポットと見なし,マルチボディダイナミクスに基づくモデル構築を試みた.これにより,振動実験で得られた伝達率の傾向に合致するような人体脊椎系のモデル化を行った.測定した2方向の全てに合致するようなモデル構築には至っていないが,垂直方向の応答に関しては,10自由度の簡易モデルによりその基本特性を表現することができた. (3)振動ダミーの作製 人体の骨格構造を基本とし,それに対して,主に椎間板や関節部に弾性を持たせて脊椎系のダミーを作製した.ダミーモデルにおいては,椎骨はほぼ剛体と考え,弾性は椎間板に持たせると考えた.椎間板の材料定数は(2)のモデルデータと解剖学データを参考とし,シリコンゴムを用いて複数のものを用意した.現在は,本ダミーの基本特性を把握している段階であるが,座面から振動が作用した場合の振動応答を模擬するためには,脊椎だけでなく,頭部や内臓,脂肪に相当する慣性質量を持たせる必要があり,これについては次年度に行う予定である.
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