研究概要 |
前野は,局所滑り覚ディスプレイの基本概念の妥当性を確認するために,ヒト指腹部の有限要素解析を行った.その結果,3分割した平板状刺激子を指に接触させ,両端の刺激子を等速で,中央の刺激子を別の速度で接線方向に移動させれば,実際にヒトの指で平板を把持する際の局所滑り状態と同様なマイスナー小体の発火分布が得られることを確認した.また,シミュレーションと同様に3分割した刺激子と,直径の異なるプーリなどから成る簡便な手動型局所滑り覚ディスプレイを試作し,この装置を用いた実験を行った.その結果,局所滑り覚を強めに提示した場合にヒトは無意識のうちに把持力を強め滑りを回避する,下位中枢による制御を行うことを確認した. 山田は,分散配置したPVDFフィルムを人工機械受容器として,局所滑り覚ディスプレイによる呈示情報をモニタするための「人工皮膚型局所滑り覚センサ」を設計・製作・評価した.具体的には,ヒト指紋稜線の構造的特徴を模倣した指紋状凸部(ridge)を6個1列に設置した呈示・センサ両機能を有するパッドを設計した.パッドがヒト指掌部と接触して,その接触面に局所滑りが生じる際には,指紋郡の一部が滑り状態の領域に,また,残りが固着状態の領域にそれぞれ属していることが想定される.このような考察に基づき,ridge単体が固着状態から滑り状態に遷移する際に,これに埋め込まれたPVDFフィルムに生じる応力の変化についてFEM解析を行ったところ,ridgeに滑りが生じる際に特徴的な応力変化が現れることが分かった.そこで,人工ニューラルネットワークを用いて,ridgeの表面が固着状態か滑り状態かを自動的に判定するセンサシステムを構築した.
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