研究概要 |
自由度配分(関節の数)が(2,3)あるいは(3,3)の指一対について、対象物体の側面が平行でなくても、外界センシングを用いなくても、また、物体情報(重心位置、物体幅)が無くても、安定把持を可能にする制御法を見出し、安定性の証明を与えるとともに、シミュレーションと実験によってそのことを確認した。これは人が栂指と人差指で物体をピンチングするとき、その近くまで手を近づけておけば、目を閉じても安定にピンチングできることに相当し、これを"blind pinching"と呼んだ。これらの結果は2004年度と2005年度のIEEE ICRA国際会議で発表し、両方ともmanipulation部門の最優秀論文の最終候補に選ばれた。 3次元物体の3次元安定把持については、ころがり接触は非ホロノミック拘束を引き起こすが、この場合の拘束条件を含めた全体系の運動方程式の導出に成功し、両側面が平行な場合に限ってではあるが、動的に安定な3次元把持が対向力によって可能になることを見出し、ロボット指一対にも3次元的"blind grasping"ができることを示した。これらの結果は報告書には間に合わなかったが、論文にまとめ学会誌に投稿することが出来た。なお、3次元指の設計は終え、各構成部品の工作と発注を終えて、組み立て段階にまで進めたが、実験的確認には至らなかった。 他に、直接の研究目的以外にも、指と手を一体にした手書きロボットについても研究し、冗長自由度をもつロボットに対しても、逆運動学を解かないで、自然で巧みな運動生成があり得ることを理論的かつ実験的に確認し、論文発表した。 なお、本研究課題を通じて、次の四つの新しい概念や手法を提案し、その重要性を明らかにした。1)多様体上安定性(stability on a manifold)、2)巧みさ指数(dexterity index)、3)ロボットによるblind grasping、4)非ホロノミック拘束下の3次元安定把持。
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