研究概要 |
前年度に引き続いて線状薄膜超伝導体素子を用いて、系統故障を模擬した過大電流(臨界電流の数倍)を通流したときの常伝導転移特性及び限流特性に関し実験を行い、薄膜超伝導限流デバイスの設計基礎データの蓄積を行った。 ・数10マイクロ秒ないし1/4サイクル以内の速い常伝導転移(即発転移)において特に重要な0.1ms〜1ms領域の転移に関する多量のデータを取得・蓄積した。これらをコンピュータシミュレーション解析と比較検討し、高性能限流デバイスに必須の超伝導素子の構造を明らかにした。即発転移は線状薄膜全体で同時に起きるわけではない。これを実現するため、するどい立ち上がりを有するパルス磁界の印加効果により一様化を図る方法を前年度に示した。本年度はさらに素子の常伝道転移から破壊に至る過程を、購入・整備した20,000回/分という画像処理が可能な超小型デジタル倍速カメラを用いて光学的に観測・評価した。これらのデータを反映して構築したコンピュータシミュレーションモデルを適用して、パラメータのさまざまな物性値に対して系統的に特性解析を行い、一様常伝導転移および限流特性に関する実験データと比較検討した。 ・さらに、限流デバイスの安定性に影響する約1/4サイクル以降の常伝道転移(遅発転移)を検討した。この特性は、特に基盤の熱拡散性と冷媒の熱伝達特性に大きく影響される。本年度は、系統故障後数サイクルまでの温度上昇に関し実験を行うとともにシミュレーション解析と比較検討して、遅発転移の迅速化に必要な基板等の特性を示し、故障除去時点で素子が安全で特性劣化しない条件を明らかにした。 以上、15年度および16年度の研究結果を総合して、迅速かつ一様な常伝導転移が可能で安定性に優れた66kV級超伝導薄膜限流デバイスの技術的見通しを与えた。
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