研究概要 |
電力システムの高信頼性・高性能化に向けて系統の短絡電流を抑制する限流デバイスが強く求められている。筆者らはこれまで本補助金を受けて独自方式の6,600V級配電系統用高性能磁気遮蔽型限流デバイスの研究を行い、その設計法を開発してきた。本計画では、さらにニーズの高い66kV級電力系統用限流デバイスの基盤技術の開発を目的とした。 近年、薄膜超伝導体の臨界電流密度特性が向上し、YBCO薄膜超伝導体では3x10^6A/cm^2以上(77K)の値が達成されている。この進捗を反映して最近、薄膜を応用した66kV級の高性能限流デバイスの研究開発が活発になった。しかし、限流動作突入時に線材全体が一様に常伝導転移せず、十分な限流特性が得られないという問題が明らかになった。また、限流動作突入直後に極めて薄い超伝導層に臨界電流密度の3〜4倍の高密度電流が流れるため、臨界電流特性の悪い箇所が局所的に過熱されて焼損等の特性劣化を引き起こすホットスポット現象の問題もある。本研究では、それらの問題を改善するため、系統故障が発生すると系統に悪影響を及ぼすことなく自動的かつ速やかに超伝導薄膜全体を一様に常伝導転移させることができる高い過渡的安定性を有する新しい方式の高性能超伝導薄膜限流デバイスの基盤技術を確立することを目的として研究を行った。具体的には、故障発生直後臨界電流密度が1.5J_c程度に達するとほぼ同時に超伝導薄膜に半値幅1〜2msのパルス磁界を印加できる新しい方式の限流デバイス装置を設計・試作した。これにより各種条件下で常伝導転移の開始からクエンチに至る過渡的挙動、および短絡故障電流の抑制実験を行い、ホットスポットの防止に最も重要な課題である一様な常伝導転移の惹起に必要な条件を明らかにした。さらに、過渡限流特性のコンピュータシミュレーションコードを開発し、諸特性の解析を行った。これらの研究により高い安定性をもつ超伝導薄膜限流デバイスの技術基盤を開発した。
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