研究概要 |
動電現象を用いた処理法は,土壌中に電極を挿入し,直流電圧を印加することで生じる動電現象すなわち,電気泳動,電気浸透,電気分解の各現象を利用したものである.しかしながら,地盤中で起こるプロセスの複雑さから,汚染物質や地盤特性による効果の違い,効率的浄化を行うための操作因子について,未解明な点が多く,系統的な研究・開発が必要とされている.そこで本研究では実際の汚染現場を想定し,研究室規模において動電現象を用いた処理を行い,重金属がどのように挙動するのか詳細に検討し評価した.今年度は,土壌中重金属の回収率・効率の向上を優先し,動電効果の確認,装置の改良,OH^-抑制や重金属脱着に関する酸性溶液の供給といった処理を行い,土壌中の諸特性,重金属回収結果を詳細に分析し,評価を加えた.その結果,(1)OH^-中和濃度の酸性溶液をcathode側へ供給することによって,OH^-の抑制と沈殿物が溶解され,回収重金属総量の50%以上を排水から回収可能であることが分かった.また中和によってpH jumpの形成を防ぎ,系内全体が酸性化したため,電気泳動が効果的に機能し,土壌中重金属を均等に移動・回収できた. (2)酸性溶液供給による系内のイオン増加は電気分解を活発にし,anodeの高濃度H^+が土壌間隙へと浸透し,土壌吸着重金属とのイオン交換(脱着)を促進させることがわかった. (3)cathode電極と土壌の間に溶液(陰極)スペースを広く設けることによって,沈殿物を溶液スペースに沈殿させ,土壌間隙中での沈殿物形成を回避できることがわかった. また,天然ゼオライトにカーボンを添加した電極を作製し,この電気的特性及びイオン吸着特性を測定し,土壌汚染物質除去用の電極として利用可能である事を確認した.
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