研究概要 |
近年,産業の発展に伴い,産業排水などからの重金属溶出による土壌の汚染が深刻化してきている.汚染土壌は様々な場所に存在しており,適切な処理対策が望まれている.汚染土壌から汚染物質である重金属を回収する方法として,動電現象を利用した処理の研究開発が近年精力的に行われている.この処理法は,土壌に電極を挿入し直流電圧を印加することによって起こる電気泳動,電気浸透,電気分解を利用したものである.しかしながら,その設計,施工性,経済性などについて未解明な点が多く,系統的な研究・開発が必要とされている.また,この処理法はイオン交換水等を土壤に浸透させて動電現象を行っており,陰極側に重金属が集められ,排水と共に回収されている.これまでは排水中に金属を集め,回収することで良しとしてきたが,実際にこの処理法を行った場合は,高濃度の重金属の混じった排水の処理も行わなければならない上,排水による2次汚染の可能性も否定できない. そこで本研究では,汚染土壌に対して,動電現象による処理を行い,電界強度の変化,酸性溶液を供給した場合の重金属の挙動,回収効率などについて詳細に検討すると共に,優れたイオン吸着能力を持つゼオライトに着目し,ゼオライトを材料とした電極を開発した.作製した試作電極は,液中における優れた導電性と,強力なイオン吸着能力を併せ持ち,その電極を陰極側に用いて動電現象を生じさせ,土壌中からの重金属回収を試みたところ,本実験における汚染土壌からは土壌中に含まれていた総鉛量のおよそ72[%]の鉛を回収する事と,総鉛量のおよそ54[%]を電極に吸着させる事ができた.動電現象によって陰極側に集められた金属イオンを電極に吸着させることにより,排水中への金属の流入を抑え,排水による2次汚染の不安を軽減させられたため,環境に優しく,効率も良い重金属回収の確立に成功した.
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