研究概要 |
本年度は,パワーケーブル用途の低損失高温超電導テープ素線の開発と,超電導素線の全交流損失を評価する全交流損失測定システムの製作を進めた。主たる研究成果を以下に記す。 1.フィラメント配置の制御による銀シースBi2223多芯テープ線材の通電損失低減化 2軸方形圧延法により,超電導フィラメントが線材断面内において列状にブロック化された構造を有する銀シースBi2223多芯テープ線材を作製し,自己磁界による通電損失特性の測定及び評価を行った。商用周波数領域における損失の主要因は,作製方法や線材形状には関係なく超電導フィラメント内で発生するヒステリシス損失であるにもかかわらず,フィラメント配置の制御を施した多芯テープ線材は,通常の銀シース加工法で作製した多芯テープ線材より最大で70%程度低い損失値を示すことが明らかになった。この損失低減は,フィラメント配置の制御により,テープエッジ近傍のフィラメントで発生する損失の抑制(エッジ効果の抑制)に起因することが判明した。 2.複数のテープ線材から構成される集合導体の通電損失特性の評価 断面形状の異なる銀シースBi2223超電導多芯テープ線材を用いて,簡単な集合導体を構成し,通電損失特性の評価を行った。実験結果と数値解析結果との比較から,導体を構成する素線(テープ線材)の形状や配置が集合導体の通電損失特性におよぼす影響を明らかにした。また,多層化・スパイラル配置といった複雑な導体構造を有する円筒状集合導体ケーブルにおける自己磁界分布を計算する数値解析手法を新しく開発し,同一層内の隣接素線間ギャップや層間距離,スパイラルピッチなどの構造パラメータが,導体内の自己磁界分布および通電損失におよぼす影響を明らかにした。 3.全交流損失測定システムの製作 交流磁界に晒された超電導テープ線材に交流通電を行い,いわゆるAC-AC測定により,交流磁界による磁化損失と自己磁界による通電損失の和,すなわち全交流損失を測定することができるシステムの製作を進めた。
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