研究課題
本研究の目的は、強誘電体が低電界印加時でも10〜50μC/cm^2という巨大な電荷量を誘起できることに着目し、従来からのSiO_2などの常誘電体に代わって強誘電体薄膜をゲート絶縁膜として用いた電界効果型トランジスタ(FET)を開発し、オン電流の値が実状のシリコンMOSFETで限界と言われる1mA/μmを遙かに超える新しいスイッチング素子を実現することである。初年度には強誘電体薄膜の吟味とチャネル長40μm以上の比較的大きなサイズのデバイスを試作し、動作原理の検証を行った。本年度は、初年度の基礎的な研究成果を踏まえ、より小さなデバイスを試作してオン電流の増大を試みた。初年度の研究から、良好な電気的特性が得られたチタン酸ランタンビスマス(BLT)を強誘電体ゲート絶縁膜として用い、導電性酸化物であるインジウムスズ酸化物(ITO)をチャネルに用いて、チャネル長5μmのデバイスを試作して、電気的特性を評価したところ、チャネル長寸法の縮小に伴って、単位チャネル幅あたりのオン電流が増大することを示すことができた。チャネル長5μm、チャネル幅25μmのBLT/ITO薄膜トランジスタにおいて、0.1mA/μmのオン電流を達成した。これは同じチャネル長のシリコンMOSFETに匹敵する値である。また、デバイスの電界効果移動度を求めると、5cm^2/Vs程度であった。以上から、本研究で得られたオン電流は、多結晶ITOチャネルの電界効果移動度が小さいにもかかわらず、強誘電体ゲート絶縁膜で20μC/cm^2の巨大な電荷量を誘起できているためと考えられ、強誘電体ゲート絶縁膜で巨大な電荷を制御するという本研究で提案したデバイス動作原理を実証できた。今後はより微細なデバイスの作製を行うことにより、更なるオン電流の増大を目指す。
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