研究概要 |
グラニュラー磁性薄膜の工業的な機能性向上、生産性向上のために、従来のスパッター法に代わり蒸着法によって繊維状グラニュラー構造を作り、磁気異方性、電気抵抗などの機能性を追及した。この構造の形状磁気異方性は、相分離を制御することによって、磁化容易軸が垂直方向、面内方向の二種類の薄膜が得られる。これらについて、以下の実験を行った。 1.Ni_<80>Fe_<20>-(CaF_2,SrF_2,MgF_2,B_2O_3)などの組成でグラニュラー構造を作成し、磁気異方性を解明する。2.微視的な磁化の構造を解明する。3.磁気異方性を決める相分離を制御し、透磁率を変化させる。4.TMRを測定する。5.透磁率の周波数特性を測定し、磁気異方性との関連を解明する。6.EMC材料としての機能性を評価する。その成果として、(1)蒸着法では、繊維状グラニュラー構造が得られ、相分離がすすんでいると垂直磁気異方性、すすんでいないと面内磁気異方性となる。(2)垂直磁気異方性を持つ薄膜においても、繊維構造の相分離が完全でなく、TMRは低い(1%以下)。(3)垂直、面内磁気異方性ともに、透磁率の周波数特性を明らかにした。特に、(Ni_<80>Fe_<20>-CaF_2、B_2O_3など)は、電気抵抗が2桁程度高い。(4)蒸着では、スパッター法に比べて3桁高い膜形成速度(10μm/min.)でも、同様な構造が得られ、基板温度の上昇も少ない。(5)蒸着膜は、伝送ノイズ吸収性能測定、放射ノイズ抑制性能測定の結果、2μmでも従来の約100μm厚の電磁波吸収シートと同等の性能を示す。以上の結果より、蒸着法では、高い生産性を持つ高周波対応磁性材料が得られることを実証した。
|