研究概要 |
本年度は,まず薄膜状の試料の熱電特性測定の測定法を碓立するため,別途予算で導入した熱電特性解析装置の立ち上げを行った.アルミナ基台に薄膜試料を固定し,Ni電極を銀ペーストで張り付ける構造とした. この装置を用いてSi基板上に堆積した無ドープのSi/Ge多層膜(周期Si[3nm]/Ge[1nm]),Bを10%ドープしたSi/Ge多層膜(膜厚〜100nm)について,その堆積温度変えて作製しつつ,熱電特性を測定するとともに,結晶性の評価および膜抵抗率の測定をした. X線回折測定の結果,堆積温度が400℃付近で,エピタキシャル成長が始まり,多層膜の周期性は,400℃まで保たれるがそれを越えると崩壊することが分かった.一方,抵抗率は,エピタキシャル成長とともに2桁ほど急激に減少し,またBドープ膜では無ドープ膜に比べ2桁低い値であった. 熱電特性測定の結果を300Kでの熱電性能指数ZTで評価したところ,400℃で作製空いた無ドープ膜でZT=0.0375が得られ,SiGeバルク体での値ZT=0.15より小さかった.一方,Bドープ膜では,ZT=0.213が得られ,バルク体の値を上回る予期していたBドープによる性能改善が現れた.膜作製温度が400℃より低いものおよび高いものではZTの値は低下した. これまでの結果を総合すると,結晶性についていうと非晶質状態あるいは十分に結晶成長が生じている場合大きな熱電効果は得られないが,結晶欠陥を多量に含みつつ結晶成長した膜が大きな熱電効果を示すものといえる.またBドープにより抵抗率が低下し,その分ZTを増大させたと考えられる.
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