本年度は、Si/Ge多層膜とSiGe合金膜の熱電特性およびSiGe膜成長時の結晶性と歪み状態の制御について検討した。 高抵抗Si基板上に膜成長温度を300-600℃の範囲で変化させSi/Ge多層膜とSiGe合金膜を成長しゼーベック係数、抵抗率を測定した。室温で測定したゼーベック係数はどちらの膜でも膜成長温度によらずほぼ一定で、1.5mV/Kであった。この値は、バルクSiGeの約3倍である。一方、熱電材料のトータルの性能に影響を及ぼす電気抵抗率は成長温度の上昇とともに低下し、400℃で最低値となった。さらに成長温度を上昇すると抵抗率は増大した。これは、膜の結晶化と膜に含まれる結晶欠陥の作用によると考えられる。これらのデータから、熱電性能指数であるパワーファクターを見積もると、Si/Ge多層膜では1x10^<-3> Wm^<-1> K^<-2>程度と小さかったが、SiGe合金膜では7.1x10^<-2> Wm^<-1> K^<-2>がという大きな値が得られた。この値は、バルクでの報告例の約10倍の値であり、熱電材料として有望であることが示された。 歪みについては、加速電圧を低下させる(@300V)ことにより、やや結晶性は劣化するものの、ほぼ無歪みで成長することがわかった。また、成長温度を500-550℃と低めに設定することにより、50-70nm という薄い膜厚でも歪み緩和が生じることを示した。このように、加速電圧、成長温度により歪み量を制御できることを明らかにした。
|