研究概要 |
ナノドットオートマトンや超低消費型単電子メモリへの応用を鑑み,我々はシリコンドットを二次元的に敷き詰めた多重ドット構造を有するトランジスタを作製し,その単電子特性を評価してきた.また,二次元多重ドットトランジスタにおける単電子転送の可能性を解明するために,ランダム系多重ドット列における交流動作についてシミュレーションを行っている.本年度は特に,単電子トンネル特性に与えるサイドゲート電圧印加の効果と,単電子ポンプ動作の可能性について以下の成果を得た. (1)二次元多重シリコンドットトランジスタの単正孔トンネル特性において,サイドゲートに電圧を印加することにより,ドレイン電流-ゲート電圧特性における立ち上がり電圧のシフトや電流ピークの生成が起こることを見出した.この結果は,サイドゲート電圧がバックゲート電圧に重乗される効果を持つことを示すとともに,ドットの帯電或いは新しい伝導経路の生成が起こることを示唆している. (2)二つのゲート電極を持つ二次元多重ドットトランジスタ構造の等価回路について,ゲート電極に位相の異なる交流電圧を印加することにより単電子ポンプ動作が可能であることを,モンテカルロシミュレーションにより見出した.この回路の安定状態図はドット内電子数により領域分けをすることが可能であり,なおかつクーロンブロッケード領域の三重点が存在することを見出した.さらに,この結果に基づいて,単電子ポンプ動作が可能であることを明らかにした.また,ゲート容量にばらつきを導入した回路も同様の状態図を持ち,三重点が存在する.以上の結果から,二次元ランダム多重ドットトランジスタが,単電子ポンプデバイスとして十分期待できることを明らかにした.
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