研究概要 |
電子ビーム励起プラズマは、所定のガスが最も電離しやすいエネルギー分布の電子ビームを照射することにより、効率よく所定のガスのプラズマを形成することができる。本科研費で製造した,この電子ビーム励起プラズマ支援4元マグネトロンスパッタ装置(以下,EBEPと略記)を用いて、(1)チャンバー内に4つのマグネトロンスパッタ源を備え、同一真空中で4つの異なる金属薄膜積層構造の作製が可能,(2)電子ビームガンからエネルギーの揃った電子ビーム照射により、電子ビーム励起プラズマ支援マグネトロンスパッタが可能,(3)エネルギーの揃った電子ビーム照射により、プラズマ窒化やプラズマ酸化でピンホールのないトンネルバリア形成が可能,という特徴をもつ。高品質な接合を作製するために,電子ビーム(EB)照射の有無によるNbおよびAl堆積薄膜の膜質の違いを比較した。 EB照射をしない通常のマグネトロンスパッタの場合と比べて,EB照射を行った電子ビーム励起プラズマ支援マグネトロンスパッタでは,Al堆積速度が最大30%増大する結果が得られた。また、Al薄膜の表面平滑性がEB照射により向上することが判った。Nb薄膜に関しては,(1)Nb堆積速度の増加,(2)Nb薄膜の膜質の度合いを表す残留抵抗比(RRR)の増加,(3)Ar圧力0.20Pa〜0.60Paで作成したNb薄膜において内部応力の軽減が得られた。電子ビーム照射でArガスが効率よく電離したためと考えられる。これらの結果から,高品質な電磁波検出器用超伝導Nb/Al-AlOx-Al/Nbジョセフソン接合を作製するための見通しが得られた。
|