研究課題
従来のパルスレーザ堆積法(Pulsed Laser Deposition: PLD)をアブレーションチヤンバーと堆積チャンバーに分離して、固体気化条件と材料堆積条件を個別に制御して、堆積基板上に高品位薄膜やナノ構造体を作製することを目的として、分離型レーザ堆積(Separated Pulsed Laser Deposition: SPLD)装置を完成させた。固体ターゲットに酸化亜鉛(ZnO)を選び、プラズマプルーム特性や基板上の堆積膜や複合薄膜デバイスの評価を行った。このSPLDでは堆積チヤンバーに永久磁石アレー(O.IT、0.27T)を配置して、荷電粒子の制御を行い、堆積速度の向上、膜質の高品位化、堆積面積の拡大などを図った。更に、基板とオリフィス部に電圧を印加することにより生ずる電界クーロンカと磁界ローレンツカの相互作用によるEXBドリフト運動か薄膜特性に与える効果を明らかにした。SPLD法による膜は、平均表面粗さ0.84nin、粒子サイズ42nmが得られ、また均質性が従来のPLD方より優れており、ヘテロ構造多層ナノ構造体を作製する上で優れた特徴が明らかとなった。従来のPLD法を用いて透明性高導電率ZnO薄膜としてアルミニウム、ガリウムをドーピングしたAl-dopedZnO(AZO)、Ga-doped ZnO(GZO)を作製し、ドーピング量を最適に選んだ結果、87%以上の透明度を有し、抵抗率が10^<-4>Ω・cm程度を有する薄膜を得た。これは現在利用されているITOの特性に匹敵するものであり、実用化に向けた薄膜デバイス(薄膜トランジスター)を試作し、移動度12.85cm^2/V-s、オン電流とオフ電流比6オーダーを得た。PLDにより有機電界発光素子(Organic Light Emitting Device: OLED)を作製した。ガラス基板上にAl-doped ZnO膜を堆積し、その土にTPD薄膜とAlq_3膜を積層し、OLEDを作製した結果、通常の真空蒸着法による薄膜より光学特性、蛍光発光特性、膜の均質性が優れていることが分かった。薄膜固体リチウムイオン二次電池の開発として、正極活物質としてマンガン酸リチウム(LiMn_2O_4)薄膜を、固体電解質としてLithium Phosphorus Oxynitride(LiPON)薄膜、負極活物質として酸化バナジウム(V_2O_5)薄膜を作製し、その電池の充放電特性は、2サイクル目の放電で1.8V付近で放電が始まり、放電容量は1.05μAh/cm^2という最も良い値を示した。
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