当該研究期間に得られた本研究の主な成果を以下に記す。(1)ポリメチルフェニルシラン-TiO_2ハイブリッド薄膜中では、SiO_2に分散させたポリメチルフェニルシランハイブリッド薄膜に比べ光誘起電荷分離により光伝導度が約1000倍に向上していることを示し、太陽電池電荷発生層、電荷輸送層としての機能を明らかにした。(2)ポリジヘキシルシラン-ZrO_2ハイブリッド薄膜においては、ポリジヘキシルシランのサーモクロミズムが、ZrO_2マトリクスによるケージ効果により消失することを見出した。このハイブリッド薄膜の熱光学(TO)係数(dn/dT)を求めたところ(nは屈折率)、約-10^<-3>K^<-1>なる大きなTO係数を有することが判明した。これよりTO光スイッチ、TO光偏向器、アッテネータなどの光デバイスの高速化、小型化、省電力化の可能を示すことができた。(3)表面をフェニル基で化学修飾したSiO_2ナノ粒子(粒径約10nm)とポリメチルフェニルシランとのテトラハイドロフラン溶液からポリメチルフェニルシラン-SiO_2ナノ粒子ハイブリッド薄膜の製膜法を開発した。SiO_2ナノ粒子の組成を制御することで、屈折率を0.1以上連続的に制御することができ、これによりインクジェット法等の印刷法によって光導波路、インターリーバ、多層フィルタ、分布帰還形レーザ等の作製が可能となった。加えて、このハイブリッド薄膜中では、ポリメチルフェニルシランの有効共役長が3倍程度になり、これに伴いドリフト移動度が約一桁増大する現象を見出した。この起源はポリメチルフェニルシランと化学修飾したSiO_2ナノ粒子のフェニル基間のπ-π相互作用によると考えられる。(4)金ナノ粒子分散ポリシラン薄膜の製膜法を確立した。作製した薄膜では、直径が5nmの金ナノ粒子がランダムに分散しており、その粒径分布の半値綿は極めて狭く、単電子デバイス、非線形光学デバイスへの応用には最適の特長を有していることを見出した。(5)フェニル基で表面を化学修飾したシリカナノ粒子をポリフルオレンやその共重合体に分散させることにより、高分子の高次構造が制御でき、その結果、ドリフト移動度や発光量子効率が大幅に向上する現象を見出した。これにより感光体、有機薄膜トランジスタ、有機EL素子の特性を向上させることが可能となった。
|