研究概要 |
古くLittleとGinzburgはエキシトンによる室温超伝導の可能性を論じた。C60誘導体自己組織単分子膜(C60-SAM)をより広範囲に、より薄いAu薄膜上に作製できれば、提案されているモデル物質系となることを我々は期待している。つまり、誘電体/金属からなる超薄膜界面では特異な電気伝導、例えばエキシトニック超伝導の可能性が期待される。 前年度、C60誘導体自己組織単分子膜(C60-SAM)をAu薄膜上に形成し、150K付近に電気抵抗の異常が見出されることをすでに報告した。今年度、引き続き試料作製を試み、電気抵抗異常に関してさらに幾つか知見をえたので報告する。 基板は900℃で12時間、アニール処理したMgO(100)基板を用いた。RFスパッタにより、Mo, Auを、それぞれ基板ヒーター温度150℃で3min,300℃で7minマスクを介してスパッタし、抵抗温度測定用の端子部分を作製した。その後、基板ヒーター300℃で5〜60secスパッタしAu超薄膜を作製した。その試料上に、自己組織化法を用いてC60-SAMを成膜した。 得られたサンプルではMgO(100)基板ステップに沿ってAu超薄膜が準1次元的に配列し、C60-SAMも同じくその上に形成された。電極は十分に強固に形成され、測定上の問題は軽減された。SAMと思われる凝集体はMgO(100)基板ステップに沿って形成され、幅は数nm、長さ数μmであった。4端子測定用の電極をMo/Auの2層とすることにより、電極付着強度は増し比較的安定な抵抗測定が可能となった。例えば、100K以上の温度領域で抵抗の減少を伴う抵抗異常を観察し、その抵抗異常は測定電流を増加することによって消滅することも確認された。この実験結果は観察された抵抗異常現象が超伝導的であることを示している。
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