研究概要 |
誘電体/金属からなる超薄膜界面では特異な電気伝導、例えばエキシトニック超伝導の可能性が期待される。我々は具体的な物質系として、側鎖系にπ電子からなるC_<60>誘導体自己組織単分子膜(C_<60>-SAM)、伝導系にはAu超薄膜をもちいることとした。 我々は清浄な単結晶基板にはステップ・テラス構造が形成されることに着目し、主に900℃〜1000℃で12時間アニール処理したMgO(100)基板を用いた。RFスパッタにより、Mo, Auを作製した。その後、その試料上に、自己組織化法を用いてC_<60>-SAMを成膜した。 SAMと思われる凝集体はMgO(100)基板ステップエッジに沿って形成され、その幅は数nm、長さ数μmにおよんでいた。試料の抵抗測定には4端子法を用いたが、十分に狭い、10μmオーダー領域での測定を再現性良く行う手法を確立する必要がある。マスクからの回り込みを利用して形成した電極(電極端間隔約20μm)をAu/Moの2層とすることにより、電極付着強度を増して比較的安定な抵抗測定が可能となった。 一連の試料の中で、Au膜厚が十分に薄い試料では、150-200Kの温度領域で線形的な温度依存性からずれて、抵抗が減少する「電気抵抗の異常な振る舞い」が観察された。例えば、100K以上の温度領域で抵抗の減少を伴う抵抗異常が観察された。また、その抵抗異常は測定電流を増加することによって消滅し、超伝導的振る舞いを示すことも確認された。
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