新規な薄膜界面での極微な液晶アンカリング強度の実現と、その界面上での液晶分子のダイナミクス機構を明確にすることを目的に研究を進めた。 本年度は、アンカリング強度制御を行うための極微配向規制力を有する材料の開発を目的として、π電子系を有しないσ電子系一次元Siポリマー材料の一つであるポリシラン配向膜を作成した。通常、液晶分子と配向膜のπ電子系同士の相互作用により、配向膜界面での液晶は強アンカリング状態を生じるため、極微アンカリングを実現するためにはπ電子系を有しない配向膜を開発する必要がある。本研究により開発したポリメチルフェニルシラン配向膜は、紫外線照射により容易に光分解するため種々の紫外線露光法により、ポリシラン配向膜の周期的なグレーティング作成が容易である。実験には、二光束干渉法により300〜900nmのピッチのポリシラン配向膜グレーティングを作成した。この手法は、局在化したナノスケール領域での極微アンカリング配列制御を可能にすることが期待できる。作成したポリシラン配向膜上でのアンカリング強度は、10^<-4>J/m^2程度であり、十分に弱アンカリングとはいえない。次年度は、様々な側鎖基を有するポリシランの材料開発により極微アンカリング制御膜を実現する。 さらに、スメクチック相・ネマチック相での液晶ダイレクタのダイナミクスを電場重複印加重水素化核磁気共鳴法により調べ、定常的なダイレクタの運動から、動的な液晶物理定数の情報を得る新たな手法を開発し、その妥当性を理論的・実験的に明らかにした。本年度の研究成果に基づき、当初の研究計画に沿って次年度の研究を進める。
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