研究課題
平成18年度は、液晶分子の動的挙動とアンカリング強度の膜厚依存性を明らかにするために、ダイレクタダイナミクスの"熱的ゆらぎ"の機構解明を目的に研究を進めた。平成16-17年度の研究を通して、ダイレクタの回転角がほぼ90°の時、その回転緩和過程においてダイレクタのランダム配向パターンが出現することを時間分解重水素化核磁気共鳴法により観測している。ダイレクタの回転緩和過程における不均一ダイレクタ配向分布の発現条件を実験的に詳細に調べ、次の結論を得た。1.磁場と電場のなす角(α)がα<45°の条件(ダイレクタの回転角に対応)では、ダイレクタ回転にともなうダイレクタ配向分布はモノドメイン分布を示す2.磁場と電場のなす角が45°<α<90°の条件では、ダイレクタ回転にともなうダイレクタ分布は均一な配向分布を示すが、配向方向に対する分布の広がりは大きくなる3.磁場と電場のなす角がα【approximately equal】0°の条件では、ダイレクタ回転にともなうダイレクタ配向分布は均一配向から不均一配向分布へと遷移する4.この不均一配向分布は、測定温度の減少により均一配向分布へ変化する5.不均一配向分布は、より強い電場印加により発現する(閾値電場が存在する)6.不均一配向分布の発現条件では、電場印加(遮断)後、ダイレクタの回転開始までに時間的な遅れ(Induction period)が発生するこの不均一ダイレクタ配向分布は、本研究により初めて観測した現象である。空間的に長距離に渡るダイレクタの"熱的ゆらぎ"は、ダイレクタの初期配向分布を決定する。磁場と電場が直交系をなす場合、初期ダイレクタ配向分布は、周期的に変動するスプレイ弾性変形状態となる。この初期配向状態から、ダイレクタ歪が、スプレイからベンド弾性変形への遷移する過程においてダイレクタの不均一配向分布が生じると結論づけた。
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