研究概要 |
通常の光学系,伝搬波を用いた画像化システムでは,画像分解能は用いる波の波長程度に制限されるが,走査型近接場顕微鏡(Scanning Near-Field Microscope)においてはこの限界以下の分解能,すなわち波長よりも十分小さい分解能で物体を観察,画像化することが可能である。本研究では,我々が提案し,現在主にミリ波帯で研究・開発を行っているスリット型プローブを用いた走査型近接場顕微鏡システムに関して,ミリ波帯からテラヘルツ波帯(周波数:30GHz〜数THz)までの高周波帯における新たな計測手法を開発し,その応用を探索することを目的としている。本年度は主に,スリット型プローブの設計理論を確立するための検討を実施した。具体的な研究事項及び結果,得られた成果を以下に示す。 テーパー型スリットプローブの最も重要な構造パラメーターである,テーパー角度の最適化を実施した。スリットプローブを構成する導波管の高さ変化による損失と反射のトレードオフに着目し,Ansoft社HFSS(High Frequency Structure Simulator)により,テーパー角度を変化した場合のプロ-ブからの放射電力の変化を計算した。その結果,テーパー型スリットプローブ先端のスリット開口幅を動作波長の千分の1程度以下にすると,放射電力,すなわち感度を最大とする最適なテーパー角度が存在することを明らかにした。 高感度計測用共振型スリットプローブを提案した。60GHz帯でHFSSを用いて本プローブの設計を行い,製作,及び特性評価を実施した。その結果,本プローブがテーパ-型スリットプローブと比較して5倍以上の高感度で動作することを実験的に確認することに成功した。 現在,受動型近接場顕微鏡システムの動作をミリ波帯で実験的に検証するための準備を進めている段階である。
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