研究概要 |
通常の光学系,伝搬波を用いた画像化システムでは,画像分解能は用いる波の波長程度に制限されるが,走査型近接場顕微鏡(Scanning Near-Field Microscope)においてはこの限界以下の分解能,すなわち波長よりも十分小さい分解能で物体を観察,画像化することが可能である。本研究では,我々が提案し,現在主にミリ波帯で研究・開発を行っているスリット型プローブを用いた走査型近接場顕微鏡システムに関して,ミリ波帯からテラヘルツ波帯(周波数:30GHz〜数THz)までの高周波帯における新たな計測手法を開発し,その応用を探索することを目的としている。本年度は主に,サブテラヘルツ帯で動作するテーパー型スリットプローブ及び,受動型近接場顕微鏡システム設計・製作を実施した。具体的な研究事項及び結果,得られた成果を以下に示す。 0.3THz(300GHz)帯で動作可能なテーパー型スリットプローブの設計,製作を行った。前年度実施した,テーパー型スリットプローブの最も重要な構造パラメーターであるテーパー角度の最適化に関する検討結果より,導波管としてWR-2.85を用い,テーパー角度3度のプローブを電気鋳造により製作した。その結果,先端部分に幅730μm,高さ25μmのスリット状開口を有するテーパー型スリットプローブの製作に成功した。本プローブは,スリット開口の高さ25μmと同程度の分解能で物体を観察できる可能性を有している。 受動型近接場顕微鏡システムの設計,製作を実施した。Ka帯(26.5〜40GHz)のテーパー型スリットプローブ,プローブからの微弱な熱雑音信号を検出する広帯域低雑音検出系等より構成される近接場顕微鏡システムを製作し,所望の特性が得られていることを確認した。
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