研究概要 |
本研究の目的は,従来の電気メッキによる半導体LSI用Cu配線技術に代わり,真空アーク蒸発法をベースにしたドライプロセスによるCu配線の要素技術を確立することである。真空アーク蒸着法は,真空アーク放電の高温の陰極点によって固体金属を蒸発させ,雰囲気ガスを必要とせず高エネルギーのイオンを発生させる方法である。しかしながら,陰極点からは固体金属陰極の微粒子,いわゆるドロップレットが発生する。このドロップレットが膜に付着すると膜質が均一でなく,また,配線溝にもCuの埋め込みができなくなる。そこで,申請者らが開発したT字状磁気輸送型フィルタード真空アーク蒸着装置(T-FAD)を適用する。以下,本研究で得られた成果を年度ごとに示す。 初年度:従来のT-FAD装置の成膜速度の3倍の速度を実現可能なマルチガンタイプのフィルタードアーク発生装置を設計した。また,大面積成膜のため,磁界を利用した低損失プラズマビームスキャナーの設計および製作を行った。同装置を用いて,約100mmの均一成膜を実現した。 次年度:新型フィルタードアーク発生装置の詳細設計および一部製作を行なった。また,成膜速度を改善するため,プラズマ磁気輸送ダクトにバイアスを印加する方法を検討した。その結果,適切なバイアスを印加すると成膜速度が2〜3倍に改善されることを明らかにした。 最終年度:2源カソードソースタイプの新型フィルタードアーク発生装置を完成させ,その特性評価を行った。その結果,新型フィルタードアーク蒸着装置は,十分な成膜速度および成膜面積を実現することができた。しかしながら,成膜速度が速すぎることに起因して,基板温度の上昇が激しく,基板を冷却する必要があることがわかった。
|