研究概要 |
低電力機能動作と記録情報の安定性を併せ持つ機能分担型メモリセルの構成材料について探索するととに,極限的なセル微細化のための自己整合型プロセスを確立して評価素子の試作及び基本動作の検証実験を行い,以下のような成果を得た. 1)非磁性層を介してソフト磁性体とハード磁性体を静磁気的に結合させた複合膜パターン(0.1μm×0.1μm)について、計算機シミュレーションによりその磁化反転特性を調べた。その結果、ソフト磁性体またはハード磁性体の単層膜パターンに比べて同等の熱安定性を確保しながら、40%程度も磁化反転磁界を低減可能なことがわかった。この磁化反転磁界の低減は、MRAMにおける情報書き込み、読み出し時の消費電力の抑制につながる重要な結果と考える。 2)ソフト磁性体であるFe-Coとキュリー温度が低く温度による磁性制御が容易なハード磁性体であるTb-Feを交換結合させた複合膜パターン(4μm×16μm)を作製し、熱アシスト磁化反転に関する基本動作実験を行った。 3)上層の機能動作用導体パターンをマスクとして下層の磁性多層膜細線をミリングする自己整合型プロセスを開発し,最小パターン幅200nmのクロスポイント構造メモリセル(CPセル)の試作に成功した.CoFe/Cu, NiFe/Cu等の磁性多層膜からなるCPセルの磁気抵抗測定結果より,パターン端部表出磁極間に作用する静磁気結合が,その磁化過程に有効に機能し,各磁性層の分担機能を統合する機構として利用できることを明らかにした. 4)メモリセルアレイにおける磁気特性のアンサンブル平均を効率的に評価可能な試料として,磁性多層膜の最上層のみに微細加工を施したレリーフ型磁性ドットアレイを作製し,その磁気抵抗の温度依存性から,磁化反転過程における活性化エネルギーのパターンサイズ依存性及び膜厚依存性を評価した.
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